ABEMAを視聴中、コメント欄を開いていると「合掌CM」という書き込みを見かけると思います。「合掌CM」はアベマの開局初期に流れていたアプリゲームのCMのことです。ABEMAだから「合掌CM」は大流行りし、CM放映が終了しても文化として残りました。
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「合掌CM」とはアプリゲーム『茜さすセカイでキミと詠う』のCM
ABEMAと企業CM
ABEMAでは、2016年4月開局当初、企業CMはありませんでした。ABEMAマスコットキャラクターのアベマくんと仲間たちのカラフルな映像がCMの代わりに流れるか、番組の隙間時間には環境映像を配信していました。環境映像とは、アニライ2チャンネルで配信開始する前に流れているような世界の映像です。フルメタルモロッコで思い浮かぶ方もいるかもしれません。
企業CMが流れ始めたのは、2016年夏以降でした。アベマにCMが流れていることにただただ感動しました。その時は今のようにユーザーごとに異なるCMではなく、同じチャンネルならば同じCMを見ているという状態でした。
アカセカCM開始
そこへ、GCRESTが提供する乙女向けアプリゲーム『茜さすセカイでキミと詠う』のCM配信が始まりました。
『茜さすセカイでキミと詠う』(略称:アカセカ)は、女性向け恋愛本格和風ファンタジーゲームで、異世界で出会う「ツクヨミ男子」と旅をするパズルRPGです。「ツクヨミ男子」というのが、高杉晋作・桂小五郎・織田信長・聖徳太子・芥川龍之介などの歴史上の人物がモデルで、超豪華な声優がキャストを務めていることでも人気があります。
アカセカのツクヨミ男子のひとりに、鑑真がいました。女性向け恋愛ゲームに鑑真というお坊さんが登場し、サングラスをかけ真顔でいい声で「君の瞳に合掌」と言うのです。アベマコメント欄は沸き立ちました。鑑真、大人気になります。
アカセカCMがABEMAで人気を得たのはガチャっぽさ
アカセカのCMは「君の瞳に合掌」のインパクトから、「合掌CM」と呼ばれるようになりました。鑑真が見たくて、CM中も画面から離れられないユーザーが続出。合掌CMを見逃したら悔しがるユーザーが続出。「今日合掌見た?」がCM中の定番コメントと化します。
「合掌CM」人気が爆発したのは、鑑真のインパクトだけが功ではありません。アカセカCMには2~3パターンあって、合掌が聞けるパターンと聞けないパターンがありました。合掌パターンが来たらラッキーというような、おみくじのような、ガチャを引くようなゲーム性があったのです。ゲームのCMにゲーム性があるゆえに人気が出るって、CM効果としては大成功ではないでしょうか。
『芥川キャンセル』を生み出す
視聴者は次第にCMパターンを学習し、「芥川の後、高杉が『ああもう』って言ったら合掌は来ない」という通称『芥川キャンセル』という造語も誕生します。
さらに、番組のキャラクターが大けがを負ったり生死に関わるような場面でCM入りすると、コメント欄にはすかさず「合掌」が溢れます。そのタイミングで合掌CMが来ないと大変がっかりしました。「合掌CM」はユーザーに求められる稀有なCMとなりました。
「合掌CM」を衰退させたもの
不動で絶大な人気の「アカセカCM」でしたが、一度ABEMA放映が終了してしまいます。「合掌CMが流れない」ということが話題になりました。もう一度見たいと思っていたところ、「アカセカCM」は復活しました。ユーザーは歓喜でしたが、もう以前のようにCMを楽しむことはできませんでした。
飽きたからでしょうか? 違います。ABEMAのCM仕様が変更された後だったからです。「アカセカCM」が復活した時、CM配信はユーザーごとに異なる仕様に変更されていました。全員で「合掌CM」を楽しんで「合掌」するという盛り上がり方はできなくなっていました。さらに、復活したCMはショートバージョンで合掌がないパターンでした。合掌CMが好きな気持ちは不完全燃焼のまま、「アカセカCM」は終了してしまいました。
合掌CMを見たい気持ち
『茜さすセカイでキミと詠う』は、ABEMA親会社サイバーエージェントのゲーム事業だということを確認して、この記事を書くことにしました。もう一度「合掌CM」を見たい気持ちがありますが、以前のように盛り上がることはないでしょう。「見せてほしいCM」は本当に稀有な存在です。
もしABEMAコメント欄で「合掌CM」という書き込みを見かけたら、投稿した人は荒らしではなく、合掌CMをなつかしんでいるだけです。そういう、心に残るCM文化だったんです。